万里の道も一歩から

エンタメもぐもぐ日記

150日目:『星落ちて、なお』

さぁやってまいりました!「直木賞全部読んでみる」の幕開けでございます!!ヨイショ!!!

ホストの合いの手みたいなことを言ってしまった。そうなんです、直木賞を全部読んでみようと思ったのです。


思い立ったきっかけとしては、私は読書量が少ないかつ基本的に好きな作家さんの作品しか読まないので、文字書きとして本当にその姿勢で良いのか??そんなばっかり食べで果たして良い文章を書けるようになるのか??と危機感を覚えたんですよ。
良質な作品を作家やジャンルにとらわれずいろいろと摂取できるアイディアないなぁ〜〜と考えたところ、あ!直木賞はどうだろう!?となりまして、歴代直木賞の作品を片っ端から読んでいくことになりました。

最近何かとホイホイKindleで買い過ぎているので身の程を弁えるために直木賞作品は図書館で借りようと思ったんですが、直近の受賞作品は一体いつになったら読めるのかわからないくらいのとんでもない予約数になっていまして……
基本的に最近のものから遡っていくスタイルでいこうと思ってるんですが、スタート地点として2021年上半期の第165回受賞作品の澤田瞳子『星落ちて、なお』から始めたいと思います。


読んだ!一気にぐわーっと読み終えてしまった!

まず「読めた!」ということが単純に嬉しいです。今まで「○○さんの作品だから」「あらすじが面白そうだから」という理由でしか本を手にしたことがない中で、「第165回直木賞受賞作品だから」という理由だけで始めた読書が無事に楽しく読み終えられた。それだけでもうこのチャレンジはきっと何とかなりそうな気がする!という希望を抱きました。良かった良かった。


「画鬼」と称される幕末明治に活躍した絵師、河鍋暁斎を父に持つ「とよ」が父の死後に画業を継ぐお話です。
一気に読み終えた後で良い話だったなぁ……という感想がじんわりと広がっている。血ではなく「黒い墨」で繋がっていると感じるような父や兄との関わりだったり葛藤だったり、真面目に芸事へと向き合った人間からするとそれわかるなぁととよの心情に共感を覚える部分もたくさんあって、うん……丁寧で良い話だった…………


とよが夫である常吉との離婚を申し出るところが個人的にめちゃくちゃグッときたんだよな。

常吉に不満があるわけでも、とよに情人が出来たわけでもない。ただ己の絵を描くためには、優しい夫とともにいてはならぬのだとの言い訳が、他人に通じるとは思い難い。

いやこの感覚めちゃくちゃわかるでしょ。そしてそれが「芸事に興味がない人間」に一切通じないのもめちゃくちゃわかるでしょ。
こうやって呪いにも似た「絵を描き続けなければ」という感情に突き動かされる一方で、自分自身は子を持つ母として父のような「画鬼」になりきれない焦燥感が胸を燻っていたりと、絵師の娘だからこその狭間で藻掻くとよの姿がなんというか……めちゃくちゃ良いんですよね……

そしてそんな狭間にいるとよだから、父や兄の絵を「受け継ぐ」のでなく「伝える」立場になる決心をするのもすごく良い。本当に丁寧なお話だなと思いました。


さぁ!直木賞全部読んでみる!まだまだ始まったばかりです!次も元気にいってみよ〜!!

おわり